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麹町消化器・内視鏡クリニック

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腹部の疾患

Abdominal-disease

Abdomen

腹部の疾患

はじめに

消化器の病気には様々なものがあり、原因となる臓器やその病態によって特徴的な症状を起こすものもあれば、特定の所見がない場合もあります。このページでは様々な消化器疾患の中から胸部・腹部・肛門部に分けて代表的なものをいくつか取り上げてみました。それぞれ原因、症状、診断、治療について簡単な説明を加えましたが、疾患の鑑別には十分な注意が必要であり、あくまで参考として読んでいただけたらと思います。病態によっては緊急を要する場合がありますし、ただの便秘だと思っていたら実は大腸がんのサインであったりなど、適切な時期に適切な治療を受ける機会を逃してしまうことのないよう、自己判断はせずに、一度は専門の医療機関を受診されることをお勧めいたします。

 

胃潰瘍

概要

胃酸の影響で胃粘膜に潰瘍ができている状態です。十二指腸潰瘍と比べると胃酸分泌が少ない高齢者の発症が多い傾向があります。胃潰瘍の原因は、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染、そして非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服薬が多くを占めます。また、ストレスの影響も受けます。

症状

みぞおちの痛みが代表的な症状です。食前・食後のどちらにも起こることがあります。お腹が張る腹部膨満感、吐き気や嘔吐、食欲不振、胸やけ、吐血、下血、貧血などを起こすこともあります。なお、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による胃潰瘍では、自覚症状がない段階で吐血や下血などを起こすこともあります。

診断と治療

造影剤を用いた胃X線検査、胃内視鏡検査により診断できます。胃内視鏡検査では、胃粘膜の状態を直接確かめることができるため、より適切な治療が可能です。また、潰瘍から出血がある場合、胃内視鏡検査時に止血処置をすることもできます。ただし、内視鏡では止血が難しい場合には、手術が必要です。
治療では主に制酸剤(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬)が処方されます。服薬によって比較的短期間に状態が改善します。ただし、再発させないために症状が収まってからも長期間服薬を続ける必要があります。なお、ヘリコバクターピロリ菌陽性の場合には、除菌治療に成功すると胃潰瘍の再発予防に大きく役立ちます。制酸剤で状態が安定したら除菌治療をおすすめしています。
また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が原因で胃潰瘍になっている場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の中止や処方の変更が最も効果的です。ただし、疾患や状態などによっては処方の中止や変更が難しいケースがあります、そうした場合には、制酸剤や粘膜を保護するプロスタグランディン製剤を処方して胃粘膜の状態改善に導きます。

 

十二指腸潰瘍

概要

十二指腸の粘膜が深く傷付いて潰瘍になっている状態です。日本では胃潰瘍の発症が多かったのですが、食の欧米化などによって十二指腸潰瘍も増加傾向にあります。胃に近い球部の壁に潰瘍ができやすく、発症は20~40歳と若い世代に多くなっています。胃酸分泌が盛んな方がかかりやすいとされていますが、その理由はわかっていません。近年になって、ヘリコバクターピロリ菌感染が発症や再発に大きく関わっていることがわかってきています。ヘリコバクターピロリ菌の感染分布が胃全体であれば胃潰瘍を発症しやすく、胃の十二指腸に最も近い幽門部に感染が集中していると十二指腸潰瘍を発症しやすいという指摘もされています。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によって発症するケースもあります。

症状
みぞおちの痛み、重苦しさ、嘔吐、食欲不振、体重減少、吐血、下血などがあります。空腹時にみぞおちの痛みが起こりやすく、食事で胃酸が薄まると一時的に症状が緩和します。嘔吐、食欲不振、体重減少は潰瘍が治る際に起こる変形によって胃と十二指腸の間の幽門が狭窄したことで生じます。潰瘍が進行すると出血によって吐血、下血、貧血などを起こすこともあります。さらに進行して十二指腸に穴ができる十二指腸穿孔になると強烈な痛みを起こします。その場合は、緊急処置が必要ですからすぐに医療機関を受診してください。
診断と治療

胃内視鏡検査では、十二指腸粘膜の状態も詳細に確認できます。また、内視鏡で組織を採取してヘリコバクターピロリ菌感染の有無を確かめることも可能です。そのため、胃内視鏡検査により診断されます。
ヘリコバクターピロリ菌に感染している場合は、状態や原因に合わせた治療を行います。除菌治療によってほとんどの潰瘍は治癒して、再発率も大きく下げることができます。
それ以外の原因によって発症している場合には、状態や原因に合わせた治療を行います。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によるものの場合には、可能であれば処方の中止や変更を行いますが、不可能な場合には胃酸分泌抑制剤の長期間継続服用によって再発を抑えます。
禁煙やストレスの上手な解消も重要です。睡眠や休息をしっかりとって、バランスの取れた食事を1日3回、規則的にとるようにするなど、健康的な生活を心がけましょう。

 

慢性胃炎

概要

胃の炎症が長期間続いている状態です。本来は胃内視鏡検査での所見と採取した組織の検査で炎症が認められる状態です。強い胃炎症状があっても胃内視鏡検査をしてみると粘膜に病変がないこともありますし、逆に内視鏡検査で炎症を確認できる状態でも自覚症状がないこともあります。ヘリコバクターピロリ菌に感染していて、痛みなどの自覚症状がないのに慢性的な炎症が続いている場合、胃がん発症や進行させてしまうリスクが高い状態ですから、除菌治療をできるだけ早く受けるようおすすめします。また、病変がないのに胃炎症状がある場合、胃の機能障害による機能性ディスペプシアとされます。こうした疾患も適切な治療により改善が見込めます。

症状

胃の痛み、お腹の張り、圧迫感などが主な症状です。ただし、慢性的に胃粘膜が炎症を起こしていても、こうした症状を起こさないケースもあります。

診断と治療

炎症を起こしている場合には、胃内視鏡検査で確認できます。ヘリコバクターピロリ菌感染の有無も確かめることができます。また、胃炎症状があって病変がない場合は、機能性ディスペプシアが疑われます。
胃炎症状が強い場合には、胃粘膜を保護する薬、胃酸を抑える薬、胃の運動を調節する薬などで状態を改善します。ヘリコバクターピロリ菌感染がある場合には、除菌治療で再発率も下げられます。またストレスの関与が大きい場合には、抗不安薬、抗うつ薬などの処方も有効です。機能性ディスペプシアが疑われる場合にもまずは症状を緩和させ、原因に合わせた治療を行います。

 

胃がん

概要

胃の粘膜に発生する上皮性悪性腫瘍で、全世界で年間約100万人が罹患しています。日本では約11万人が毎年罹患しているとされているため、日本人に多いがんです。胃がんは日本で長く「がん死亡数・がん患者数」のトップを占めていましたが、内視鏡検査による早期発見や治療法の進歩によって最近は死亡率が徐々に低下してきています。
ヘリコバクターピロリ菌感染による慢性的な炎症が胃がん発症に大きく関わっているとされています。慢性的な胃の炎症によって胃粘膜が萎縮し、腸上皮化生を起こすことで胃がんにつながると考えられています。そのため、ヘリコバクターピロリ菌感染がある場合は、炎症が進行しないうちに除菌治療を受けることが重要だとされています。

症状

かなり進行しないと自覚症状がほとんどないケースが多くなっています。進行して現れる症状には、胃やみぞおちの痛み、不快感、膨満感、胸やけ、げっぷ、吐き気、食欲不振、貧血、体重減少などで、多くの胃疾患と共通しているため見逃されやすい傾向があります。

検査と診断

がんの発見は、X線検査や胃内視鏡検査などで可能です。特に早期の胃がん発見に有効なのは、胃内視鏡検査です。胃内視鏡検査では組織を採取して病理検査ができるため、確定診断も可能です。早期に発見することで、ほとんどの場合、胃がんは治すことができる病気になっています。

X線検査

造影剤と発泡剤を使った二重造影法は日本で開発されて検診に広く用いられ、早期胃がんの発見に貢献してきました。

内視鏡検査

現在は楽に受けられるようになって、定期的に胃内視鏡検査を受ける方が増えてきています。胃粘膜を直接観察することができますし、特殊な光で微細ながんを発見できるようになっているため、精度の高い検査が可能です。また、内視鏡スコープの先から鉗子という器具を使って組織を採取・回収できますので、顕微鏡による病理検査で確定診断が可能です。

それ以外の検査

周辺のリンパ節、遠くにある臓器などへの転移の有無を調べるために、腹部超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などを行うことがあります。

治療

必要な検査を行って、がんの位置、形態、大きさ、胃壁内の深さ、リンパ節転移といった所見に応じて進行度を判定します。その上で、治療ガイドラインにより治療方針が決定します。

早期胃がんの治療

転移の可能性が低い状態です。進行度に合わせた治療を行います。開腹手術が行われることもありますが、内視鏡や腹腔鏡による侵襲の少ない手術が行われるケースが増えてきています。侵襲の少ない手術であれば、手術による傷が小さいため、痛みや出血が軽くすんで回復も早く、入院期間も短縮できます。

進行胃がんの治療

標準的な範囲でリンパ節を摘出する手術や、より広い範囲でリンパ節を摘出する手術、切除が周囲臓器に及ぶ手術などが行われます。また、抗がん剤による化学療法も大きく進歩しているため、併用されるケースも増えています。
なお、進行して腹膜播種を起こし、がん細胞が腹部に広がってしまったケースや、血流に乗って遠隔臓器に転移している場合も化学療法が行われます。

 

大腸がん

概要

現在、がんによる死亡原因として、大腸がんは男女ともに上位を占めています。血縁者に大腸がんになった方がいる場合、発症しやすい傾向があります。また、肥満、飲酒、加工肉を好んで食べること、喫煙なども発症に影響すると考えられています。近年になって大腸がんの発症数が増加傾向にあるのは、脂肪摂取量の増加など食を中心とした生活の欧米化が関係しているとされています。

 

虚血性腸炎

概要

虚血は、血管が一時的に詰まって血流が途絶え、その先に酸素や栄養素が届かなくなっている状態で、炎症などを起こします。虚血性腸炎では大腸血管の血流が滞って大腸壁が虚血を起こし、炎症・潰瘍などを生じさせます。腸管が壊死する可能性もあるため、早めに適切な治療を受けることが重要です。発症頻度が高いのは下行結腸です。

症状

主な症状は、腰痛・下痢・血便です。頻度は高くありませんが腸閉塞を起こすと膨満感や嘔吐といった症状が現れることもあります。こうした症状は幅広い大腸疾患で起こりますが、突然腹痛が起こって通常の排便をした後で鮮やかに赤い血便が出る場合、虚血性腸炎が強く疑われます。

原因

高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病や加齢による動脈硬化、便秘による腸管内圧の上昇によって大腸血管が詰まることが原因となって発症します。ストレスや運動不足、食事なども発症に関係していると考えられています。

検査

血液検査や腹部超音波(エコー)検査を行います。また、内視鏡検査では炎症や潰瘍の程度や範囲などを正確に確認できますし、疑わしい部分の組織を採取して病理検査を行うことで確定診断が可能です。虚血性腸炎で起こる症状は、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸憩室炎など幅広い大腸疾患と共通しています。早期に適切な治療を行うことが特に重要な大腸がん・クローン病・潰瘍性大腸炎との見極めのためにも、内視鏡検査が重要になってきます。ただし、状態によっては内視鏡検査ができないケースもあります。

クローン病と潰瘍性大腸炎

どちらも消化管に慢性的な炎症や潰瘍を繰り返す慢性疾患で、根治に導く治療法がないため難病指定されています。炎症を抑える治療を続けることでよい状態を長く保ち、発症以前とほとんど変わらない生活を送ることも不可能ではありません。内視鏡検査で特徴的な病変の有無を確かめ、状態に合わせた治療を行います。当院では内視鏡検査と治療の経験豊富な医師が丁寧に検査を行っていますので、負担の少ない精密な検査で診断が可能です。

治療

ほとんどの虚血性腸炎は数日で症状が改善される一過性のものですから、抗菌剤を投与して消化のよいものを食べ、安静を保って経過を観察します。
ただし、病変部分の腸管が狭窄している場合や、壊死を起こしている場合には手術が必要になります。

 

潰瘍性大腸炎

概要

大腸粘膜に慢性的な炎症を起こす病気です。潰瘍やびらんが生じて下痢や血便、粘血便、腹痛などを起こします。状態が悪化すると1日10回以上の粘血便や血便が出ることもあります。症状が改善する寛解期と、症状が悪化する再燃期を繰り返すため、治療では寛解期を長く保つことが重要になってきます。炎症は肛門に近い直腸から奥に向けて広がる傾向があるため、炎症の範囲を定期的に観察することも大切です。
はっきりとした原因がわかっていないため根治に導く治療法がなく、難病指定されています。炎症は適切な治療によってコントロールできるため、発症前とあまり変わらない生活を送れるケースも多くなっています。ただし、腸管が広がる中毒性巨大結腸症、腸壁に穴が開く穿孔、がんなど深刻な合併症を起こすことがあるため、慎重に経過を確認しながら適切な治療を続ける必要があります。
発症は幅広い年齢層に起こりますが、比較的若い世代の発症が多い傾向があります。患者数は欧米よりかなり少ないのですが、最近増加しています。

原因

細菌やウイルス感染がきっかけになる、食物アレルギーなどさまざまな原因が指摘されてきましたが、はっきりとした原因はまだわかっていません。現在は、遺伝的な要因に、食べ物・腸内細菌叢・環境因子、免疫異常などが重なって発症するのではと考えられています。

症状

下痢や血便、粘血便、腹痛などを起こし、1日10回以上の粘血便や血便、血性下痢を起こすこともあります。

診断

症状の内容、はじまった時期、病歴、服用している薬などについて問診でくわしくうかがいます。
便潜血検査で血便の有無を確かめ、血液検査で炎症反応を確認します。その上で、大腸内視鏡検査で腸粘膜の状態を確認し、特徴的な病変の有無や、範囲などを調べて診断します。

治療

基本的に、炎症抑制や免疫異常を是正する5-アミノサリチル酸製剤を使った治療を行います。炎症が悪化している場合には、ステロイドなどを使って速やかに炎症を解消に導くこともあります。炎症が治まらない、または再燃を繰り返す場合は、免疫調節剤の使用や血球成分除去療法が検討されます。ほとんどの場合、こうした治療によって状態が改善します。十分な効果が得られない場合や、重い合併症を起こしている場合には手術も検討します。

できるだけ再燃させないためにも継続した治療が不可欠です。また、炎症が広がってしまった全大腸炎型の場合、大腸がんを合併しやすいとされています。内視鏡検査を受けることで炎症範囲の正確な把握やより適した治療が可能になりますし、大腸がんの早期発見にもつながります。そのため、定期的な大腸内視鏡検査が重要になります。

 

クローン病

概要

口から肛門までの消化管に慢性的な潰瘍ができる病気です。病変は主に小腸と大腸にでき、深くて特徴のある形状の潰瘍ができます。主な症状は腹痛、下痢、血便で、症状のない寛解期と症状が起こる再燃期を繰り返し、原因がわからず根治に導く治療法がないため難病指定されています。潰瘍性大腸炎に似ていますが異なる病気です。クローン病は栄養療法や食事制限が必要になることがありますので、専門医を受診して正確に鑑別してもらうことが重要です。10~20歳代の若い世代の発症が多く、患者数は増加傾向にあります。

原因

細菌やウイルスの感染がきっかけになる、食事で摂取したものが異常な反応を引き起こしているなどが指摘されてきましたが、原因はまだはっきりとはわかっていません。現在は、背景に遺伝子異常があって、細菌・ウイルス・食事の成分などに対する免疫の異常反応が起きていると考えられています。

症状

症状のない寛解期と症状が起こる再燃期を繰り返し、主な症状には腹痛、下痢、血便があります。他に発熱、体重減少などを起こすことがあります。他にも口内炎や痔など消化管のあらゆる部分に病変ができることがあります。炎症が最も起こりやすいのは小腸と大腸の境目周辺で、小腸だけ・大腸だけに病変が現れる場合もありますし、小腸と大腸の両方に病変がある場合もあります。長い期間再燃を繰り返して手術が必要になることも珍しくありませんし、消化管以外への合併症を起こすこともあります。

診断

症状の内容やはじまった時期、病歴や服用している薬などについて問診でうかがいます。便潜血検査で血便の有無を確かめ、血液検査で炎症反応や栄養状態を確認し、大腸内視鏡検査で腸粘膜の状態を確認します。また、CT検査やMRI検査が必要になることもあります。こうした、検査の結果を総合的に判断して診断します。

治療

炎症を抑えて症状を改善すること、そして腸管の炎症で不足した栄養状態を改善することが重要です。栄養療法は、炎症の原因となる成分を抜いた栄養を補給することで症状の改善と腸管の安静に役立ちます。また、病変の改善も期待できます。治療によって症状が改善したら通常の食事も可能ですが、悪化につながる成分を摂取しないように注意することが大切です。
炎症を抑えるための薬物療法では、5-アミノサリチル酸製剤を中心に処方します。炎症が強い場合には、短期間に炎症を鎮めるためにステロイドを使うこともあります。また、寛解の維持に免疫調節剤を使います。現在は、抗TNF-α抗体によって炎症を抑制する治療が可能になっていて、効果的な治療につながっています。
長期間再燃を繰り返して腸の狭窄を起こしたり、腸壁から他の臓器へ管状の細いトンネルができてしまう瘻孔ができたりした場合には、手術が検討されます。

 

急性虫垂炎(盲腸)

概要

大腸の最も小腸に近い部分である盲腸から突き出した細長い部分が虫垂です。この虫垂が閉塞して細菌感染を起こし、炎症を起こしている状態が虫垂炎です。虫垂が穿孔を起こしてしまうと腹膜炎などを起こす可能性があるため、早期に適切な治療を受けることが重要です。

症状

突然、上腹部やおへそ周辺に強い腹痛を起こし、痛みはやがて右下の方に移動します。吐き気や嘔吐、ガス、膨満感、便が出ないなどの症状を起こすこともあります。虫垂が穿孔を起こして腹膜炎になると腹部全体に激しい痛みを起こします。発熱や白血球の増加などを起こすこともあります。

検査

触診で発見できる場合もありますが、X線検査や腹部超音波(エコー)検査などで盲腸や虫垂の状態を確認して診断します。他の疾患との鑑別のためにCT検査を行うこともあります。

治療

炎症が軽度の場合には抗菌剤を使った薬物療法を行って経過を観察します。穿孔を起こす可能性がある場合には、開腹、あるいは腹腔鏡による虫垂切除手術を行います。

 

胆石症

概要

胆のうや胆管に結石ができる病気の総称で、結石ができた場所によって胆のう結石・総胆管結石・肝内胆管結石に分けられます。胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的にためておく場所であり、胆汁を濃縮する働きも持っています。胆汁は胆管を通って膵管との合流部分で膵液と混ざり、十二指腸に分泌されます。

胆汁と胆石

胆汁は脂肪や炭水化物の消化を助ける役割を持っており、肝臓では1日に500ml以上の胆汁が作られています。主な成分はビリルビン、コレステロール、胆汁酸、レシチンなどです。胆のうによる濃縮や細菌感感染による分解でこうした成分が結晶化して結石になります。胆石は成分によってコレステロール結石や色素結石などに分けられます。

症状

みぞおちを中心に激しい痛みが起こりやすく、痛みが右肩や背中にも起こることもよくあります。吐き気や嘔吐をともなうことも珍しくありません。脂っこい食事や食べ過ぎた後、数時間経過してから痛みが起きやすい傾向があり、夜中に痛みを起こすケースが多くなっています。発熱をともなう場合は炎症を起こしている可能性があります。また、胆管に結石が詰まると肝障害を起こし、黄疸などの症状を現すこともあります。

検査

みぞおちの痛みなどの症状がある場合、血液検査を行います。炎症反応、肝酵素(GOT・GPTなど)、胆道系酵素(ALP、LAP、γ-GPT)の上昇がある場合には胆石症の可能性が高いと言えます。また、ビリルビンやアミラーゼが上昇している場合は、胆石が総胆管出口を塞いで黄疸や急性膵炎を合併している可能性があります。
血液検査で胆石症が疑われる場合、超音波(エコー)検査で結石の有無を確かめます。総胆管結石以外の胆石はほとんどが超音波検査で発見できます。CT検査は、石灰化胆石の発見や胆のう周囲の炎症の状態を観察するために行われます。総胆管結石は、経静脈的胆道造影法(DIC)・磁気共鳴胆道膵管造影法(MRCP)で検出でき、総胆管の状態を知るためにも重要な検査です。また、総胆管結石は内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)によって診断と同時に摘出を行うことが可能です。

治療

胆石の種類によっては内服薬で胆石の成分を徐々に融解させる胆汁酸溶解療法が可能なケースもありますが、成功率が数%しかありませんし、石灰化してしまった胆石には融解の効果がありません。また、体外から衝撃波を当てて胆石を粉砕する体外衝撃波粉砕療法(ESWL)も、膵炎・胆管炎・胆道閉塞など深刻な合併症を起こす可能性があり、再発もしやすいためほとんど行われていません。胆石症の根治には外科手術が必要です。
胆管結石の場合は、胃内視鏡を十二指腸まで挿入して、十二指腸乳頭を切開して拡張し、結石を除去することができます。侵襲が少ないため、お身体への負担を抑えられる治療法です。

 

過敏性腸症候群

概要

腸管に炎症などの器質的障害がなく、機能的な問題で症状を起こしていると考えられています。主な症状は、腹痛や膨満感などの腹部症状、便秘や下痢といった便通異常です。下痢型・便秘型・下痢と便秘を繰り返す交替型、膨満感などを起こすその他の4タイプに分けることができます。
腸は自律神経によってコントロールされているので、緊張やストレスをきっかけに強い腹痛や激しい下痢などの症状を起こしやすく、お仕事や学業に深刻な支障を生じるケースも少なくありません。特に、20~40歳代の発症が多いため、できるだけ早く受診して適切な治療を受けることが重要です。

原因

さまざまな原因が関与して発症すると考えられています。消化管の蠕動運動の異常、腸の知覚過敏、ストレスや生活習慣などが要因として指摘されています。

症状

下痢型・便秘型、交替型、その他の4タイプに分けられます。下痢型は、突然強い腹痛に襲われてトイレに駆け込むと激しい下痢をします。便秘型は、いきんでも小さくコロコロした便しか出ずに残便感があり、腹痛をともないます。交替型は便秘と下痢を繰り返します。その他には、膨満感や無意識にガスが出てしまうなどの症状があります。
タイプにかかわらず、下腹部の痛み、不快感、吐き気などを起こしやすく、めまい・頭痛・肩こり・動悸・イライラ・不安・睡眠障害などをともなうこともあります。

診断

症状についてくわしくうかがいます。ただし、症状は他の大腸疾患やそれ以外の内科的疾患とも共通しています。そのため、血液検査で炎症の有無を調べ、大腸内視鏡検査で大腸粘膜に病変がないかを確かめるなど、症状に合わせて必要な検査を行います。こうした検査によって他の器質的疾患ではないとわかった場合に、過敏性腸症候群と診断されます。

治療

症状を緩和させる治療が中心になります。薬物療法は症状に合わせて消化管運動機能調節薬や便の水分量を調整する薬などを処方します。また、抗うつ剤や不安を抑える薬などが有効な場合もあります。
他に、生活習慣の見直し、そして食事療法も重要です。刺激物やアルコール、脂肪分の多いものを避け、食物繊維や乳酸菌食品を積極的にとります。また、特定の食品で症状を起こしやすい場合にはその食品を避けるようにします。暴飲暴食を避けて3食をできるだけ決まった時間にとり、睡眠や休息をしっかりとって、趣味などで上手にストレスを発散してください。

 

感染性腸炎

概要

急性の腸炎は、ほとんどが細菌・ウイルス・寄生虫などの病原微生物によって起こります。ただし、薬剤やアレルギー、動脈硬化などで急性腸炎になることもありますので、鑑別と適切な治療を受ける必要があります。また、慢性腸炎にも腸結核やアメーバ赤痢など感染性のものがあります。細菌によるものの場合は培養で原因を特定できる場合もありますが、ウイルスによるものは原因を特定できないため、症状や流行状況などを総合的に判断して診断しています。

原因

病原性微生物による感染性腸炎は、細菌性食中毒とウイルス性腸炎が多く、細菌やウイルスが腸粘膜に感染するものと、細菌が作り出す毒素によって症状を起こすものに分けられます。主な症状は腹痛や下痢ですが、血便、発熱、吐き気・嘔吐、食欲不振などの症状を起こすことがあり、経過や症状などによってある程度は原因を絞れます。
まれですが、コレラ、赤痢、腸チフス・パラチフスになった場合には、迅速な届出や指定医療機関による治療、二次感染予防が義務付けられます。

症状
細菌性腸炎

代表的なものに、サルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌などがあります。

サルモネラ
鶏卵や食肉によって感染します。潜伏期間は8~48時間で、吐き気、腹痛、下痢を起こします。

カンピロバクター
主に鶏肉から感染します。潜伏期間は1~7日間と比較的長いのが特徴です。最初、かぜのような症状が現れます。

腸炎ビブリオ
主に魚介類から感染し、潜伏期間は10~18時間です。激しい腹痛や発熱、下痢などを起こします。

ブドウ球菌
さまざまな食品から感染します。ブドウ球菌が作り出す毒素によって吐き気や嘔吐、下痢などの症状を起こします。潜伏期間は1~5時間程度です。

O-157
腸管出血性大腸菌の1種で、ベロ毒素を産生します。下痢、血便を起こしますが、溶血性尿毒症症候群になると急性腎障害や溶血性貧血などを起こすこともあります。経口感染だけでなく二次感染も起こすため、注意が必要な感染症です。

ウイルス性腸炎

エンテロウイルス、腸管アデノウイルス、ノロウイルスなどによるものが多く、乳幼児ではロタウイルスに注意が必要です。空気が乾燥した冬に流行することが多く、「お腹のかぜ」と呼ばれることもあります。

治療と予防

下痢の症状がある場合は、原因にかかわらず脱水を起こさないように水分補給をすることが不可欠です。特に高齢者や乳幼児は脱水が進行しやすいので早めに受診するようにしてください。下痢がひどくなければ経口補水液などで水分補給が可能ですが、脱水を起こす可能性がある場合や嘔吐などにより口から十分な水分を摂取できない場合は速やかに点滴が必要です。
なお、感染性腸炎の疑いがある場合、下痢止めを自己判断で服用すると毒素や病原体の排出が妨げられて症状を悪化させる可能性があります。また、腸管出血性大腸菌感染は、抗生物質の投与によって重症化することがあります。
予防は、こまめな手洗いと、食品の管理が重要です。生の肉や魚を調理したら、その都度調理器具と手を必ず洗ってください。また、肉や魚は常温に放置しないよう心がけましょう。
また下痢をしているご家族がいる場合、食器などを共有しないよう注意し、使用後のトイレの消毒、吐いたものなどの処理には気を付けるようにしてください。

 

機能性ディスペプシア

概要

胸焼け、みぞおちの痛み、膨満感などがありますが、胃内視鏡検査などを行っても食道や胃の粘膜に病変がない状態です。炎症などの器質的な問題ではなく、蠕動運動や知覚過敏といった機能障害が関与して発症していると考えられています。
食道や胃という上部消化管の症状があって検査をしても病変が認められない方は以前から多かったのですが、これまでは有効な治療を受けられずにいたケースがほとんどを占めました。機能性ディスペプシアは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させて、お仕事や学業にも多大な支障を及ぼすことの多い病気です。検査で異常がないと言われた、慢性胃炎で長く治療を受けているという方は、機能性ディスペプシアの可能性があります。お悩みがありましたらお気軽にご相談ください。

原因

機能性ディスペプシアは症状から定義されている疾患ですから、発症の原因はわかっていません。現在は、発症に関与している多くの要因が指摘されている段階です。主な要因は、蠕動運動などの機能異常、粘膜の炎症、消化管や脳の知覚過敏、ストレス、胃酸分泌などです。

症状

食後の胃もたれ、すぐにお腹がいっぱいになってしまう、みぞおちの痛み、胸焼けという症状の1つ以上があって、血液検査や胃内視鏡検査でも炎症などの器質的病変がない状態です。診断基準では、半年以上前に症状が起こりはじめて、3ヶ月以上症状が続いている場合とされていますが、早めの治療が有効ですからこうした期間にこだわらずに受診することをおすすめします。

治療

症状を改善させるために、消化管運動調節薬や胃酸分泌抑制薬、痙攣を鎮める鎮痙薬などを使います。漢方の処方が適しているケースもあります。また、消化管は自律神経によってコントロールされているため、抗うつ薬や抗不安薬の処方が有効な場合もあります。

 

大腸憩室症

概要

消化管などの壁が拡張して袋状になっている状態が憩室です。外側に向けて飛び出すため、内視鏡検査ではくぼみとして確認されます。内視鏡検査では10人に1人程度に見つかっていて、増加傾向にあるとされています。腸壁自体が飛び出す真正憩室はまれで、腸粘膜だけが筋層の間から飛び出す仮性憩室がほとんどを占めます。憩室ができやすい方もありますし、多発するケースもありますが、大腸憩室自体は特に問題を起こしませんので炎症などを起こしていない限り治療の必要はありません。憩室が炎症を起こすと腹痛や血便、下血などを起こすことがあります。憩室炎や周辺の炎症が起きた場合は、悪化すると腹膜炎につながる可能性もありますので、できるだけ早く適切な治療を受ける必要になります。憩室があって腹部症状で受診される際には、憩室があることを最初に伝えることでスムーズに診断・治療が可能になります。

原因

腸の内圧が高くなって、粘膜が筋層の弱い部分から押し出されると考えられています。

症状

憩室自体は無症状です。ただし憩室が炎症を起こすと、腹痛・血便などを起こすことがあります。

診断

炎症を起こしていない憩室は、ほとんどが別の目的で受けた内視鏡検査などで発見されます。憩室炎を起こしている場合には、治療が必要です。状態を確認するために超音波(エコー)検査や腹部CT検査なども行われますが、大腸内視鏡検査によって確定診断可能です。

治療

憩室炎、そして憩室周囲に炎症を起こす憩室周囲炎が疑われる場合は、速やかに治療を受けてください。腸壁に穴が開く穿孔を起こすと腹膜炎になってしまうため緊急手術が必要になります。憩室炎や憩室周囲炎では炎症によって出血し、血便や下血を起こすことがあります。自然に止血するケースが大半を占めますが、出血量が多い・何度も繰り返す場合は大腸内視鏡による止血処置を行います。
炎症を起こしていない場合は特に治療の必要はありませんが、便秘をすると腸の内圧が高まって憩室ができるリスクが上昇します。また憩室炎を起こしたことがある場合は大腸の狭窄や癒着を起こしやすいため、便通コントロールは特に重要です。

 

便潜血

概要

消化管から出血して、便の中に血液が混入した血便は、便の見た目でわかる肉眼的血便と、見た目ではわからないほど微量の血液の混入で検査してはじめてわかる顕微鏡的血便に分けられます。便潜血検査は、顕微鏡的血便の有無を調べる検査です。
以前行われていた化学的便潜血検査では、肉類や鉄材など摂取したものに反応して擬陽性になりやすかったのですが、現在はヒト由来のヘモグロビンに反応する免疫学的便潜血検査が主に行われています。免疫学的便潜血検査では事前の食事制限が必要もありません。
大腸がんのスクリーニング検査として健康診断などに組み込まれることが多いのですが、消化管からの出血の有無を調べる検査ですから、養子になった場合も出血の原因を調べるための精密検査が必要です。

検査方法

便をご自分で採取して提出し、検査します。一般的に、1日1回の採取を2日間続けて行う2日法が行われています。採取キットにはわかりやすい説明書が添付されていますので、それに従って採取します。

検査が陽性の場合

消化管のどこかで出血を起こしています。再度の便潜血検査を受けて陰性になったとしても、それで病気の可能性がなくなるわけではありません。便潜血検査では大腸がんを見逃してしまうケースも少なくないため、便潜血検査を短期間に何度受けても意味がありません。大腸がんや前がん病変の大腸ポリープは微細な早期の段階でも大腸内視鏡検査を受けることで発見できますし、確定診断が可能です。
陽性で可能性のある病気には、炎症性腸疾患、痔核や裂肛などの肛門疾患があります。精密検査で大腸がんが発見されるケースは0.1~3%とされていますが、便潜血検査で発見された大腸がんは比較的楽な治療で完治できる可能性がありますので、精密検査を受けることは重要です。精密検査を受けることは安心にもつながります。陽性をきっかけと捉えて、できるだけ早く受診してください。

 

便秘症

『慢性便秘症診療ガイドライン』では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。便秘というと数日に1度しか排便がないといったイメージがあると思いますが、排便が毎日あっても残便感や排便困難があるなどの状態も便秘に含まれます。
便秘では、排便困難、膨満感などの不快感、そして腸への負担が問題になります。小腸から送り出されてきた内容物は消化吸収後の残骸であり、大腸で水分が吸収されて便になります。大腸に滞留する時間が長くなると便の水分含有量が低下して硬い便になり排出が困難になります。便秘はさまざまな大腸疾患のリスク要因ですし、切れ痔やいぼ痔を繰り返す原因となるケースもよくあります。快適に暮らすためにも、健康を守るためにも、便秘の解消はとても重要です。よくある症状ですが、専門医を受診してしっかり検査を受けることで、より効果的な治療が可能になりますし、再発予防にもつながります。便秘でお悩みがありましたら、気軽にいらしてください。

 

脂肪肝

概要

肝臓全体に脂肪がたまっている状態です。肝臓の周囲に脂肪層があるのではなく、主に中性脂肪が肝細胞の中にも蓄積されています。肝臓は吸収された栄養分などから中性脂肪を作ります。肝臓は作った中性脂肪の1部を蓄えますが、健康な肝臓では全体の数%程度です。脂肪肝は肝細胞の3分の1以上に脂肪滴が認められる状態で、肝臓の代謝能力では処理しきれない脂肪が脂肪滴としてたまっています。

原因

肥満、アルコール、糖尿病によるものが多くを占めますが、内分泌や代謝などに関わる病気や薬剤、重度の栄養障害などが原因になって起こることもあります。原因を突き止めて、適切な治療をすることが重要です。アルコールが原因の脂肪肝だけでなく、それ以外の原因で起こる非アルコール性脂肪性肝炎も肝硬変や肝臓がんに進展するケースがあることがわかっています。脂肪肝で非アルコール性脂肪性肝炎に進展するのは1部だけですが、進展が起こる原因についてはまだはっきりとはわかっていません。

症状

自覚症状に乏しいため、健康診断などで受けた血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)などの数値から肝障害の疑いを指摘され、それをきっかけに精密検査を受けて発見されるケースが多くなっています。精密検査として、超音波(エコー)検査を行い、腎臓とのコントラスト差、肝臓内部の血管などを観察して診断します。

治療

肥満、アルコールが原因の場合には、食べ過ぎやアルコール摂取量を控え、食事療法と運動療法を行います。補助的に脂肪代謝改善のための薬剤が使われることはありますが、基本は生活習慣の改善です。

 

アニサキス症

概要

クジラやイルカといった海獣を終宿主とする寄生虫で、サバ・イカ・サケ・アジなどさまざまな魚介類が中間宿主になります。アニサキスに寄生された魚介類を十分火が通っていない状態で口にして、激しい腹痛を起こすのがアニサキス症です。

症状

寄生された魚介類を食べて数時間後に激しい胃の痛みや嘔吐などの症状が突然現れます。アニサキスは人間の体内では生存できないため、1週間程度で死滅します。なお、内視鏡によるアニサキスの除去で痛みなどの症状は速やかに軽減します。

診断

アニサキスは十分な温度による加熱や冷凍で死滅しますが、生のままや加熱が不十分な場合には感染する可能性があります。問診でそうした魚介類を食べて数時間後に激しい痛みを起こしたことがわかった場合には、アニサキスの有無を確かめて除去するために胃内視鏡検査を行います。

治療

内視鏡スコープの先から鉗子を出してアニサキスを除去します。消化管に食い込んでいることが多いため、きれいに除去できるよう慎重に引き抜きます。炎症による肉芽腫を形成させないためにも早めの受診が重要です。ただし、食事からあまり時間が経っていない場合、内容物に邪魔されてアニサキスを全て見つけられないことがありますし、安全上の問題も起こりやすくなります。そのため、数時間経過してから検査と摘出を行うこともあります。

予防とご注意

冷凍はマイナス20 で24~48時間、加熱は芯の部分まで70℃または60℃を1分間保つことで、アニサキスは死滅するとされています。なお、乳幼児は内視鏡検査と治療が難しいため、魚介類はしっかり火を通して与えるようにしてください。

 

ヘリコバクターピロリ菌

概要

胃の中に住み着く細菌で、感染すると慢性的な炎症を起こします。胃潰瘍の約70~80%、十二指腸潰瘍の約90%にはヘリコバクターピロリ菌が関わっているとされています。日本で行われた長期間経過調査では、感染者だけに胃がんが発症していました。ただし、感染していても胃がんにならない方も存在します。こうしたことから、ヘリコバクターピロリ菌感染が胃がんになりやすい環境にして、遺伝的要因、環境、食事や食塩摂取量といったさまざまな因子によって胃がんになると考えられています。

感染状況と感染経路

飲み水が汚染されて感染すると考えられていて、衛生環境が悪い後進国では感染率が高く、上下水道が完備された先進国では少ない傾向があります。ただし、日本は先進国としては感染率が高く、約60%が感染しているという指摘もあります。感染するのは幼少期で、免疫や胃酸が強くなった成人の感染はありません。実際に日本でも若年層の感染率はかなり下がってきています。ただし、口移しや食器の共有などで感染する可能性もあるとされているため、陽性の場合には除菌治療に成功することで次世代への感染を防止できます。

診断

胃内視鏡検査では組織を採取して行う検査と、それ以外の検査があります。胃内視鏡検査では胃粘膜の状態も詳細に確認できますし、数多くの疾患を確定診断できるため、適切な治療や予防に大きく役立ちます。採取した組織を顕微鏡で観察する検査、培養して調べる検査、酵素反応を確認する検査などがあります。
内視鏡を使わない検査には、血液や尿を採取して行う抗体測定法、便を採取して行う抗原測定法、そして検査薬服用の前後で息を採取して調べる呼気試験法があります。

治療

慢性胃炎などの診断を受けた場合、ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療は健康保険適用になります。除菌治療は、抗菌剤2種類と、その効果を高めるプロトンポンプ阻害薬を1週間服用して終了します。100%成功するものではなく、成功率は約70~80%です。服用終了後、一定期間をおいて除菌成功判定の検査を行います。除菌が失敗した場合は、抗菌薬1種類を変更して再度の除菌治療が可能です。1回目と2回目の除菌治療を受けた場合、約90%以上が除菌に成功するとされています。

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